急性緑内障発作

急性緑内障発作とは

緑内障とは、眼圧(目の圧力)などによって視神経が障害されることで、見える範囲が少しずつ狭くなってしまう疾患です。失われた視野を元の状態へ回復させることはできません。最悪の場合、失明に至ることもあります。緑内障は、日本では失明原因の第一位を占めている疾患です。
緑内障の多くは徐々に進行していくため、初期の段階では自覚するのが難しいとされています。しかし、急性緑内障発作の場合、急に激しい眼圧上昇が起こります。最悪の場合、一晩で失明する可能性があるため、速やかに受診しなくてはいけません。
また症状だけを見た場合、脳の疾患だと誤診され、治療が遅れてしまう恐れもあります。
急性緑内障発作が起こった際は、眼圧下降などの治療を迅速に行う必要がありますので、下記に記載するような症状がありましたらお早めにご相談ください。

急性緑内障発作の症状

急激に眼圧が高くなるため、多くの緑内障とは異なる症状がみられます。

など

急性緑内障発作の原因

房水とは、眼球内に流れている液体です。房水には、角膜や水晶体、硝子体などのように血管が存在しない透明な組織に栄養を届ける役目があります。房水は毛様体によって生成され、虹彩と水晶体の間を通って前房へ流れ、線維柱帯からシュレム管へ流れ出ます。そして、目の外にある血管へ流れていきます。
この房水の循環によって、眼球内には一定の圧力がかかり続けられます。この圧力が「眼圧」です。
眼圧の高低は、眼球内で流れている房水の量によって左右されます。房水の出口が詰まる、または狭くなることで流れにくくなると、眼圧は高くなります。流れ出るところが狭くなった状態を「狭隅角(きょうぐうかく)」、流れが滞り眼圧が高くなる状態を「閉塞隅角症」と言います。
急激に狭隅角が進行すると、隅角の詰まりによってさらに房水が排水されにくくなるため、房水の流れが滞り、瞳孔ブロックという状態になります。進行すると閉塞範囲が広くなるため、最悪の場合、房水が全く排出されなくなってしまいます。その結果、急激に眼圧が上昇していくのです。
正常な眼圧は10〜21mmHg ですが、急性緑内障発作になると50mmHg以上にまで高くなります。

急性緑内障発作を誘発する薬もあります

抗コリン作用を有する薬剤には、隅角を狭くさせる効果があるため、急性緑内障発作のリスクを高める可能性があります。
抗コリン作用を有する薬剤の具体例としては、市販の風邪薬や睡眠薬、抗ヒスタミン薬、手術・胃カメラ検査などで用いる麻酔薬などが挙げられます。添付文書に必ず、(閉塞隅角)緑内障の方は内服にあたり注意をするようにと書いてあります。
狭隅角の患者様が先述した薬を使ってしまうと、緑内障発作が起こる恐れがあります。全身麻酔や内視鏡検査を実施する際は、慎重にリスクを考慮しなくてはなりません。
その場合は、レーザー手術や白内障手術などを行い、急性緑内障発作を防ぐことが必要です。手術後でしたら、発作の心配をせずに服用することができます。

急性緑内障発作の治療と予防

点眼・点滴

急性緑内障発作の治療で大切なことは、迅速な眼圧下降です。

  • 1〜2%ピロカルピンをこまめに点眼する(縮瞳作用により隅角を広げます)
  • マンニトールなどの高浸透圧薬の点滴を行う(急速に眼圧を低下させます)

また、ひどい頭痛や目の痛みがある場合は、鎮痛薬を処方していきます。

レーザー虹彩切開術(LI)・周辺虹彩切開術(PI)

レーザーを使って虹彩の周りに孔を作り、房水の通り道を確保していきます。
点眼麻酔を施した後は、虹彩切開用のコンタクトレンズを装着します。まぶたに覆われている上側または鼻側の虹彩周辺部に、レーザーを当てていきます。レーザー虹彩切開術は、角膜内皮細胞減少のリスクがあり、水疱性角膜症を発症する恐れがあるため、適応は慎重に検討します。
眼球の中が確認できる場合はレーザー虹彩切開術が選択されますが、角膜が濁っている場合などは、周辺虹彩切開術を検討します。
片方の目が急性緑内障発作を起こした場合は、もう片方の目にも発作が起こる可能性があるため、予防としてレーザー治療や手術を行っていきます。

白内障手術

「緑内障を治すのになんで白内障手術を?」と疑問に抱いた方もいるのではないでしょうか。
濁った水晶体を摘出して眼内レンズを入れていく白内障手術は、緑内障の予防にも有効です。人工の眼内レンズは、水晶体と比べてボリュームが薄いため、隅角が開きやすくなります。その結果、房水が排水されやすくなるため、緑内障発作の予防にも非常に効果があると言えるのです。急性緑内障発作の治療と予防のために、白内障手術が推奨されます。白内障手術が難しい場合のみ、レーザー虹彩切開術や周辺虹彩切除術を選択します。

定期検査を受けましょう

初期の緑内障では、自覚症状が乏しいため、病状が進行してから診断される方も少なくありません。緑内障で失った視野は回復することができないため、早期発見が大切です。緑内障と診断されてしまっても、適切な治療を受けることで、視機能は維持することができますので、定期的に検査を受けるようにしましょう。

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